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自作ゲームフェス4

ノベルスフィア賞 選考座談会2 「優秀賞3作品編」


編集部のsuzukiです。
「選考座談会」、第2回となります!
前回の記事もご好評をいただいているようで、嬉しい限りです。

なにこれ? という方はこちら
第1回「佳作4作品編」はこちらになります。

本日は優秀賞の「ソラミミ×DIAMOND」「ghostpia」「falling」の選評になります、続きからどうぞ!

編集部員紹介

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笠井。編集長。
自他ともに認める鍵っ子にして、ノベルゲームに魅せられた男。「ノベルスフィア」を切り盛りする運営力・技術力を併せ持ち、ノベルゲーム愛の心で編集部を取り仕切る。
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M。編集部員その1。
同人・商業問わずノベルゲームを日々読み漁り、豊富なプレイ経験を土台にした評価には定評がある。読者目線を忘れず、作品への没入感を重視する。
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suzuki。編集部員その2。
広く浅く変なものを探しており、現在はノベルゲームの持つ不思議な魅力に興味津々。「ノベルスフィア」ではスクリプトも担当し、構造的な方向からの評価を好む。

変なだけじゃなくて、「変さ」のクオリティも尋常じゃない

作品名:
ソラミミ×DIAMOND
DL:
http://www.freem.ne.jp/win/game/7719
制作者:
ミルチァンゲーム

笠井
では、優秀作の選評を始めましょうか。1作目はミルチァンゲーム(ユカイナ印)さんの「ソラミミ×DIAMOND」。うーん、この作品は……ズルいね!w
suzuki
これはもう、自作ゲームフェス4に感謝ですね。こういう機会がなかったらこの作品に出会えなかったかもしれませんから。
奇妙な画面構成、奇妙な舞台設定、奇妙なストーリー。とにかく幻想的な世界観に満ちています。しかも変なだけじゃなくて、「変さ」のクオリティも尋常じゃない。ストーリーは荒唐無稽なようでいて筋が存在する絶妙なラインで、コラージュの要素が強いビジュアルも美術点高いです。

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笠井
suzukiくんが注目しているビジュアルだけど、背景美術が幻想的なだけでなく、キャラ絵がしっかりかわいいのがいいね。個人的には気の強い方の女の子(※草里 楓)がとてもよいw
キャラ絵のかわいさと背景美術の幻想的な印象にギャップがあって、さらにその上に奇抜な物語が載っかっているので、有無を言わさぬ迫力がある。今回の作品の中ではストーリーの奇抜さが突き抜けているから、10分ぐらいで終わるというシナリオの短さもむしろ心地よい。
M
「ソラミミ×DIAMOND」は音の使い方のセンスも光ってると思いますね。特に、クリックするたびに鳴る効果音が気持ちいい! 作品の雰囲気にも、この作品にしか出せない味があり、BGMと相まって、プレイしていて何ともいえない爽快感があります。
とはいえ、雰囲気は抜群だったんですけど、一番強く残る部分も雰囲気だけになってしまっていると感じました。私にとってはどんなゲームだったのか印象に残りづらかったというところはありますが…おふたりはかなり推してますねw
suzuki
雰囲気だけが印象に残る、というのはそうかもしれませんね。でも、その雰囲気という持ち味がずば抜けているから、もうそれでいいのではと思ってしまうぐらいに魅力的です。
M
確かに、電子ドラッグ的な魅力がありますよね。今も笠井さんが横でずっとプレイしてますしw

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笠井
ついついやっちゃうんだよ!w
雰囲気だけになってしまうというのは難しい問題で、ではこの短いシナリオに骨太の明快なストーリーを突っこんだらより魅力的になったかと言われると、やはりそうは思えない。しかし物語らしきものは確かに進行していて、次回以降への引きもある。未完であることが良い方向に働いているという、極めて珍しい例かもしれない。
suzuki
評価が難しい作品ですよね。魅力が欠点になってしまうし、欠点が魅力になってしまう。
M
どう評価していいかは迷いましたけど、これはノベルスフィアで取り上げなければ!という強いパワーを感じました。
優秀賞受賞、おめでとうございます!

素敵な作品だったからこそ、今まで知らなかったことがショックです

作品名:
falling
DL:
http://www.freem.ne.jp/win/game/7329
制作者:
にんじゃむ

笠井
次はにんじゃむさんの「falling」です。この作品は、Mさんが猛プッシュしていたのが印象的だった。

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M
そうですね、「牟奄-ムエン-」と並んでノベルスフィア賞に推していました。
というのも、私がノベルゲームに求めている要素が全部詰まっているんです。ビジュアル、シナリオ、演出、キャラクター……どの要素も高水準なノベルゲームでした。
最初はギャグなのかと思って軽い気持ちでプレイしていたんですが、途中から選考を忘れてプレイに没頭してしまい…気づいたらオールクリアしちゃいました。プレイ後にはキャラクター一人ひとりが愛おしくなっています。トゥルーエンディングを迎えた後のタイトル画面の変化も、いかにもノベルゲーム的な演出で好きですね〜。
suzuki
タイトル画面の変化で「終わった……」と強い読後感を得ることができるのが、この作品の質の高さを証明してますね。
笠井
前回の座談会で佳作の「渡り鳥の門は遠く sing again」の時にも触れたけど、「falling」も作品全体のまとまりに対する気遣いを感じる。背景のほとんどが手描きで、背景とキャラ絵の塗りに統一感があったり。それでいて、冗長だったり萎縮したりはしておらず、のびのびと作られた雰囲気があるね。
suzuki
ただ、 全体のまとまりがしっかりしているからか、逆に細かい部分が少し気になってしまいます。グリフ(※クリック待ち時に表示される矢印状のアイコン)が吉里吉里のデフォルトだったり、少々なおざりなConfig画面などのクオリティを上げると、武器としている“まとまり”がより光るものになると思いました。
笠井
なるほど。とはいえ「falling」はシナリオが光る作品なわけだから、シナリオを邪魔しないというのが最も求められていることだと思う。その意味で、僕は問題だとは思わなかったかな。

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M
そうですね。先ほど少し触れましたが、キャラクターがどれもよかった。シナリオがいいからキャラクターも映えます。特に探偵のマロンがお気に入りですね。主役並みに美味しい設定と過去を持っているのにサブキャラというのがたまらないです。続編や番外のような形で、彼が主役の話も見てみたい!
ここまで熱く語りましたが、ニコニコ自作ゲームフェス4がなければ私は「falling」というゲームに正直出会えなかったでしょうね。素敵な作品だったからこそ、今まで知らなかったことがショックですし、ノベルスフィア賞に推すことで知名度を上げてもっとこのゲームを広めたかった。もっと評価されるべきだと思ったんです。「ソラミミ×DIAMOND」の項でsuzukiさんも言っていますが、自作ゲームフェス4に感謝ですね。
suzuki
良い作品はやっぱり多くの人にプレイしてほしいですよね。
この作品は端正に作り込まれている反面、インパクトに弱く、ユーザーが手に取りづらいように思えます。「これ面白いのかな、時間かける価値あるのかな」と二の足を踏んでいるユーザーに、「面白いよ!」とお墨付きを与える役割も、今回の企画は担えたらいいなと思っています。
笠井
そうだね。一方で、ノベルスフィア賞(と自作ゲームフェス)はあくまでもコンテストであって、そこに作品作りの正解があるわけではないというのも伝えておきたい。全体のまとまり感をアピールする方針で勝負しても、一点突破のアイディアで勝負しても、それを受けとめるのは多数の読者だから、どちらが正解ということはない。
にんじゃむさんに限らず、自分たちの制作チームの強みがどこにあるのかを踏まえると、いい作品作りができるのではないかなと思います。

各々の尖った個性が、その強い力によってまとめ上げられている

作品名:
ghostpia
DL:
https://appsto.re/i6B97s4
制作者:
超水道

笠井
優秀賞最後の作品は、超水道さんの「ghostpia」。うーん、この作品の登場は僕たちにとっては喜びだねw
suzuki
ノベルスフィア! O₂ Engine! 超水道!
M
もうノベルスフィアではすっかりおなじみですね。
笠井
超水道さんには、ノベルスフィアの立ち上げの頃からO₂ Engineを使って頂いており、この作品もノベルスフィアで公開されています。

suzuki
この作品はともかく、「特殊性と一般性の両立」という点に集約されていると思います。この作品、確かに独特の雰囲気が真っ先に取りざたされます。音や絵にノイズがふんだんに使われたり、立ち絵という概念を適度に崩した、絵本を思わせる画面構成だったり。しかし一方で、ユーザーを意識した作り込みに妥協を感じません。
M
特にタイトル画面の作りがいいですね〜。とにかく触れてみたくなる、動かしてみたくなるんです! フリックしていると、Macを操作しているときのような快感があります。私タイトル画面だけでしばらく遊んじゃいましたw
suzuki
普段O₂ Engineのスクリプターである僕が言うのもアレですが、「よくぞここまで使ってくれた」という気持ちですね。
笠井
正直、O₂ Engineでここまでできるとは我々も思っていなかった。タッチデバイスを意識したインターフェースデザインも、Windows向けゲームがほとんどである自作ゲームフェスの中にあっては異色だね。しかしPCに触れる機会がどんどん減っていく時代の中で、マルチデバイスを意識するということはとても重要なことだと思う。
suzuki
大衆受けとオリジナリティを両立する、ということはまさしく「言うが易し」で至難の技のはずなんですが、この「ghostpia」は高いレベルで実現していますね。

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笠井
シナリオ、絵、音楽のそれぞれが恐ろしく尖った個性を主張していて、それぞれが高い完成度を持っている。こういう作品というのは、えてして、ちぐはぐな作品に仕上がってしまうことも多い。しかしこの作品はそうなっていないんだよね。それは、個々の要素をまとめ上げる強力なコンセプトワークがあるおかげだと思う。各々の尖った個性をコンセプトワークによってまとめ上げている凄みが、この作品の最大の長所でしょう。
M
suzukiさんの言うノイズも、まさにそういうコンセプトが垣間見えるところだと思います。
「ghostpia」は公開前から公式サイトをチェックしていましたが、キャッチコピーやメインビジュアルだけで既に世界ができあがっていて、公開が待ち遠しかったですね。期待以上の内容に舌を巻きました。プレイ時間は短いのに、中身は超濃厚ですよ。次回予告の引きもニクい! 予告の最後、思わず笑っちゃいました。 物語はまだまだ先が長いみたいだし、今後の展開にも期待大ですね。
笠井
「ghostpia」は従来のノベルゲームファンを唸らせつつノベルゲームの新たな地平を垣間見せてくれる素晴らしい作品です。ただ、率直にノベルスフィア賞選考の観点から述べれば、同一制作者さんによる重複受賞は避けたいという意向がありました(※超水道さんは自作ゲーム3において「佐倉ユウナの上京」にてノベルスフィア賞を受賞)。
suzuki
未完成であることは惜しいものの、もちろん作品としては素晴らしいものです。このような形でこの作品を語ることができて嬉しいです。受賞おめでとうございます!

次回はいよいよノベルスフィア賞作品! 12月19日(金)予定です

今回はここまでとなります。
いかがでしたでしょうか。

次回は、いよいよノベルスフィア賞を受賞された「牟奄-ムエン-」の選評を行っていきます!
12月19日(金)の更新を予定していますので、お楽しみに!