【自作ゲームフェス2018】座談会 大賞『One week, My room』& 総評
One week, My room
- 笠井
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さて、座談会も最終回ということで、大賞の受賞作について、それからニコニコ自作ゲームフェス2018の総評か。
大賞の座を射止めたのは、サークル『常夜灯』の『One week, My room』。
- 作品名:
- One week, My room
- PLAY:
- https://www.freem.ne.jp/win/game/14961
- 制作者:
- 常夜灯(ウェブサイト)
- suzuki
- 毎回、どの作品を大賞とするかはかなり評が分かれて、かなり議論が白熱する印象でしたが、今回はすんなり決まりましたね。
- Akemi
- そうだったんですね!
- 笠井
- One week, My roomは、完成度も独自性も、頭一つ抜きん出ていた印象だね。掛け値なしにノベルスフィア賞を受賞するにふさわしい作品だったと思う。
新しいカタチのノベルゲームとして
- suzuki
- この作品をプレイして、『これは新しい世代のノベルゲームなんだ』と思いました。部屋の色々なポイントは選択肢で、選んだ結果に応じて物語が進んでいく体験は、ノベルゲームといってよいと思いました。
- 笠井
- 複数回のプレイが前提になっていて、同じシナリオを何度も読むループの中で、何度もバッドエンドを迎えつつ、ハッピーエンドを求めて悪戦苦闘するという構造は、いかにもノベルゲーム的だよね。
- Akemi
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まごうことなきストーリーゲーでしたね。クリア後に読めるアーカイブで少しずつ全貌が分かっていく感じとか……。
最初見たときは脱出ゲームとか、かわいいパズルゲームとか、一週間でお部屋を模様替えしたりとかする可愛いゲームかと思ったんですけど、実際は鬱ゲーでした……
- 笠井
- 模様替えゲーは、ある意味正しい。タンス限定だけど……。
- Akemi
- あれほんと怖いですよね。模様替えしないと大変なことに……。
- suzuki
- 模様替えとは違いますが、行動した後に部屋の鏡の布がはらりと落ちるところ、あれは物語とシステムががっちりかみ合っていて、とてもいい描写でした。
- Akemi
- あれでそっと選択肢が増えますよね。いわゆる『フラグが立った!』が視覚的に起きたわけですけど。
現在のノベルゲームに対する一つの”答え”
- Akemi
- suzukiさん、さっき『現代的なノベルゲームだ』とおっしゃっていましたけど、どの辺りを指してそうおっしゃったんですか?
- suzuki
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もっと正確に言うなら、『現代のゲーム事情に適応したノベルゲーム』という感じでしょうか。
長大なシナリオを何周も何周もプレイした先のカタルシスを追い求めるスタイルではなく、短いシナリオの中に物語を濃縮して体験させるスタイルは、非常に現代的だと思いました。
- 笠井
- 商業ノベルゲームでは、こういうノベルゲームは出しづらいと思う。自作ゲームという自由な土壌ならではの作品だね。商業作品となると、まだノベルゲームは分量があってナンボなところがあるからなあ。
- suzuki
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プレイヤーを長時間拘束するようなゲームは、相当のブランドがついていたり、リッチだったりしないとプレイされ辛くなってきていると思います。
"One Week,MyRoom"は、そういった現況に対しての一つの答えであると言えると思います。
- Akemi
- なるほど、"One Week,MyRoom"はノベルゲームの未来を一歩リードした作品といえるかも知れませんね!
- 笠井
- 文句なしに、今年のノベルスフィア賞を受賞するにふさわしい作品だったと思います!
ニコニコ自作ゲームフェス2018 総評
- 笠井
- ということで、受賞作は以上、4作品だね。
- Akemi
- 改めまして、受賞者のみなさま、おめでとうございますー!
- 笠井
- いつも今年はここで『今年はこうだったね〜』的なことを話しているけど、今年はサンプル数が少ないから、ちょっと難しいかもな……
- Akemi
- かなしい……
- suzuki
- 前回の自作ゲームフェスが自作ゲームフェスMV(RPGツクールで作った作品限定の自作ゲームフェス)だった影響で今回もアツマール作品の比率がかなり多いことと関係はあるかも知れませんね。
- Akemi
- でも今回もノベルゲームが無いわけではなかったから、これからまた増えるかも。
- 笠井
- どうなるかは全くわからないけど、ぜひ期待したいところだね!
ノベルゲームは千の風になって?
- Akemi
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まあでも、今って色んなコンテンツがプレイヤーの時間を全力で奪い合っていく感じじゃないですか。クリエイターも、短い時間に刺激を詰め込もうとめちゃくちゃ頑張ってるっていうか。
そんな中で、『ノベルゲームを作ろう!』って判断は、クリエイター的には相当な英断になっちゃいますよね。
- 笠井
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確かに、ニコニコ自作ゲームフェスで全力で受賞を狙いに行こう、って思った時に従来型のノベルゲームを選ぶ俠気?のある人は、そう多くない気がする。
しかし一方で、One Week,MyRoomのような現代的なノベルゲームも現れ始めて、一定の人気を得ているわけだし、結局は工夫次第なんじゃないかな。
- suzuki
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審査をしてて何度も思ったんですけど、ノベルゲームって、きっと無くなることはないんだろうなって。確かに、『これはノベルゲームです』と銘打たれた作品は減るかも知れない。
でも、無意識のうちに『ノベルゲーム的なもの』に、現代のプレイヤーは無意識に触れているんじゃないかと思っていて……
- Akemi
- 的なもの? ですか?
- suzuki
- 例えば、僕はFate/Grand Order(以下、FGO)をやってるんですけど、これのイベントパートって完全にノベルゲームなんですよね。
- 笠井
- ほう。
- suzuki
- これはFGOがType-Moon作品の派生だからではなくて、立ち絵でキャラクターが会話するパートでストーリーを描写するソシャゲは枚挙にいとまが無いはずです。
- Akemi
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た、確かに! あのゲームもそのゲームも……。
振り返ってみても、ストーリーパートの掛け合いとかでキャラを把握してるところがありますね、もし無くなったら、あんまり楽しくないし、ガチャを引こうとも思わないかな……。
- suzuki
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今回受賞した『マリー僕はキミを』『ロンリィセカイ』も、ゲームの中のノベルゲーム的な要素にきらめくものがあったわけですけど、でも、制作者さんは絶対ノベルゲームを作ろうと思って作ってないと思います。
意識していないだけで、もう我々はノベルゲームから逃れられないんですよ……!
- 笠井
- ノベルゲームが無くなっても、ゲームにストーリーが必要なくなるわけではない。他のゲームの中で、ノベルゲームの世界で洗練されたノベルゲーム的表現が『小さなノベルゲーム』として息づいているわけだ。
- Akemi
- 千の風になって吹き渡っているんですね!
- suzuki
- 千の風という表現はお亡くなりになった感が出てしまうので、できれば避けたいです!
- 笠井
- 今回のニコニコ自作ゲームフェスは、ノベルゲームの本数こそ少なかったけれど、少し違う角度からノベルゲームを見ることができたという意味ではとても意義深かったと言えるね。
- Akemi
- でもやっぱり本数がたくさん来たら嬉しいですけどね〜。
- suzuki
- ノベルゲームは制作期間も長いものが多いですし、次こそは前回のような盛況になったらいいなと思います。
- 笠井
- これからの自作ゲーム界隈におけるノベルゲームの立ち位置はどうなっていくのか。次回の自作ゲームフェスも楽しみだね!
- suzuki
- ですね!
- Akemi
- 制作者の皆様、素敵な作品をありがとうございました!
三人:ありあがとうございました!