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自作ゲームフェス5

ノベルスフィア賞 選考座談会 佳作編


編集部のsuzukiです。「選考座談会」、はじまりました。
今回は佳作5作品について話していきます。

それでは、続きからどうぞ!

編集部員紹介

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笠井。編集長。
自他ともに認める鍵っ子にして、ノベルゲームに魅せられた男。「ノベルスフィア」を切り盛りする運営力・技術力を併せ持ち、ノベルゲーム愛の心で編集部を取り仕切る。
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M。編集部員その1。
同人・商業問わずノベルゲームを日々読み漁り、豊富なプレイ経験を土台にした評価には定評がある。読者目線を忘れず、作品への没入感を重視する。
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suzuki。編集部員その2。
広く浅く変なものを探しており、現在はノベルゲームの持つ不思議な魅力に興味津々。「ノベルスフィア」ではスクリプトも担当し、構造的な方向からの評価を好む。

これほどシンプルな操作にも関わらず、全員が「新感覚」を味わったというのは凄い

作品名:
Space to go
PLAY:
http://unitygameuploader.jpn.org/game/701.html
制作者:
geekdrums

笠井
では、今回もやっていきましょう! 今回は佳作編になります。今回も白熱した議論となりましたが、“光る”作品が多かった印象だったね。
suzuki
はい。今回は佳作として前回より多い5作品を選出させていただいたのですが、その辺りが理由になりますね。ここで取り上げたい、話をしたいって作品が多かったです。
その中でも、geekdrumsさんの「Space to go」はぜひとも話をしたいと思った作品です。
M
ノベルゲームのような、音ゲーのような、不思議な作品ですね。本当にシンプルな造りなんですけど、あっという間にフワフワと作品に入っていけます。ノベルゲームにとって「クリック」って重要な動作なんですけど、それを音ゲーという切り口で捉えるとこうなるのかと感心しました。

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笠井
そうだね。これほどシンプルな操作にも関わらず、我々全員が「新感覚」を味わったというのは凄いことだよね。
suzuki
はい、このゲームには本来的な意味でのインスパイアを受けます。「ノベルゲームの枠を出ていないのにも関わらずノベルゲームとは違うゲームになっている」というのは、ある種の悔しさというか、「やられた!」という思いがしますね。
M
いまノベルゲームを作っている方にぜひプレイしてほしい作品ですね。
それと、やっぱり音楽による没入感って大事だと再認識させられますね。「Space to go」はクリックしているだけなのに演奏に参加している気になれて、一層音楽に入っていけます。最後に音楽に関する嬉しい仕掛けがあるのもニクいですね。

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suzuki
あっさりとしたシナリオ展開は少し物足りなさを感じましたが、ゲーム性を考えると仕方ない部分のあるのかなと思います。
笠井
うん。ボリュームや演出次第ではもっと魅力的なストーリーを展開させることは十分可能だと思うけど、用意できる作業量で最大限の魅力を出そうという姿勢が伺えた。ワンアイディアをスマートに形にまとめる上での選択だったのだと思います。
M
受賞おめでとうございます!

作品を知ってもらいプレイしてもらうまでの導線がよく考えられている

作品名:
Campus Notes
PLAY:
http://4th-cluster.com/campus_notes/
制作者:
4th cluster

笠井
次の作品は4th clusterさんの「Campus Notes」です。このサークルはノベルスフィアにとってもお馴染みですね。
M
はい。番外編である「Campus Notes - Bill of Fare -」がノベルスフィアにも公開されています。グルメ紹介ノベルっていうのはありそうでなくて新鮮ですね。

suzuki
僕この「Bill of Fare」好きですねー! 特に「龍郎」編は、二郎系ラーメンの食レポをノベルゲームで表現していて、超美味しそうにみえます。さりげないシナリオとモノローグ中心の食レポが「孤独のグルメ」を思わせて、ノベルゲームと良い感じにマッチしています。
笠井
この「Bill of fare」が良い例だけど、「Campus Notes」はまとまった広報活動を行っているところが印象的だよね。ユーザーが簡単に見れるWebで作品に触れてもらったり、過去作を無料化したときに最新作の体験版を同梱したり。
もちろんWebサイトも端正なつくりで、「Campus Notes」を知ってもらいプレイしてもらうまでの導線がよく考えられている。
suzuki
僕も以前同人活動していたのですが、作品を作ることに集中して広報はつい後手後手になってしまうんですよね。「ゲームメディアにプレスリリースを送る」という発想がそもそもない同人サークルが圧倒的に多いんじゃないかな。そんな中、4th clusterさんは本当に考えられているなと思います。
M
本編はフリー化された「Campus Notes vol.2」をプレイしましたが、学園をテーマにそつなくまとまっていました。キャラ同士の掛け合いをいつまでも見ていたくなりますし、女の子のグラフィックも端正でかわいいです。

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suzuki
音楽が自作というのも気合いが入ってますよね。ただ、シナリオは、僕としてはやや物足りない印象でした。安心して読めるのですが、反面、やや退屈な印象を受けてしまいます。
笠井
なるほど。それは特に序盤、読み進める原動力が弱いのが原因だと僕は思う。「実在の学校を舞台にした学園ドラマ」というのは面白いし強い“推し”だと思うのだけど、シナリオをぐいぐい引っ張っていく種類ではないしね。
音楽もグラフィックもシナリオも悪くないし、むしろ良いと思う。一方で、それぞれに尖った部分がないので、どうしても淡泊な印象は受けてしまうね。
M
うーん、私はあまり気にならなかったですね。プレイして損のない作品だと思います。雰囲気もしっかりしていますし、魅力的なキャラクターが物事に取り組む姿はノベルゲームの王道という感じで満足できました。
舞台に対する愛が伝わってきます。
笠井
プレイして損のない、というのはその通りだね。受賞おめでとうございます!


直前に控えたコミケ88では最新作「Campus Notes : forget me not. 」のサウンドトラック+主題歌のCDを発売予定とのことです。ノベルスフィアで公開中の「Bill of Fare」でも使用されている楽曲も収録予定とのこと。

とにかくユーザーを意識して作られていることが伺える

作品名:
姫君は優雅に推理する
PLAY:
http://www.yox-project.com/jp/himegimi/
制作者:
YOX-Project

笠井
続いてはYOX-Projectさんの「姫君は優雅に推理する」です。この作品は本当にスキが少ないですよね。
suzuki
とにかく優等生的な造り・クオリティです。どこを切り取ってもほとんど文句がない。
M
そうですね。正統派ミステリノベルで、グラフィックもクオリティが高く、UIなど小物のデザインにも気を配られています。演出もよく動いて楽しいですね。

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笠井
プラットフォームも、ほぼ完全にマルチプラットフォームを実現しているね。このプラットフォーム環境で、これだけリッチな作りにするのは簡単なことではない。
UI設計もマルチプラットフォームを考え、ややモバイルに比重が置かれてはいるがPCでもストレスのないつくりになっている。ここからも、とにかくユーザーを意識して作られていることが伺えるね。
suzuki
「日本文化大好きな姫様の来日」っていうシナリオの導入も、この作品らしさが如実に出ていますよね。「日本すごい」系のテレビ番組やニュース記事は人気ですし。主人公である姫様が来日して、真っ先に秋葉原に赴いて興奮するシーンは僕にとって凄く印象的でした。
一話無料でそれ以降有料(アプリ内で購入可能)という形なんですけど、この作品にとって凄く自然な形だと思います。
M
シナリオ本編にあたるミステリ部分もテンポよく進んで面白いです。キャラクターもそれぞれ魅力的ですが、特に主人公のセイラはテンプレになりがちなところで踏み止まり、特徴のある良いキャラクターになっています。謎解きの難易度もほどよく、老若男女楽しめる内容になっています。

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suzuki
はい。一方で、優秀賞/大賞と比べると、パンチの弱さがどうしても気になってしまいますね。
笠井
これほど完成度の高い作品を世に出すのにもちろん並ならぬ情熱が必要だったと思うけど、「これが作りたいんだ!」という面が見えにくくなってしまっている印象を受ける。
ユーザーを考えないのは論外としても、ユーザーを見続けると胸に突き刺さるものになり辛くなってしまう。これは本当に難しいね……。
M
そうですね……制作者の方々を尊敬します。
もちろん、この作品が誰にでも勧められる良ノベルなのは間違いないです。ぜひプレイしてほしいと思いますね。受賞おめでとうございます!

ノベルゲームへの愛、ノワール系への愛を感じる作り込み

作品名:
紅蜘蛛2/Red Spider2
PLAY:
http://www.rpgdl.org/rsl2/
制作者:
studio wasp

笠井
続いて、studio waspさんの「紅蜘蛛2/Red Spider2」です。受賞おめでとうございます!
M
おめでとうございます! 実写を加工した立ち絵といい、語り口といい、この作品はとにかく硬派さが特徴的ですね。自作ゲームフェス4で投稿された前作「紅蜘蛛/Red Spider」から依然として、凍るような暴虐の世界を描いています。イベント画らしいイベント画がないのですが、それが逆に硬派さを強めていますね。

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suzuki
ノワールっていうのは一定ファンがいるので、そういう人にはとにかく刺さる作品ですね。
笠井
ノワールものって確かにたまに観たくなるよね。裏切りと血と金の応酬って、見ていてある種の気持ち良さがある。しかし、翻ってこの作品を見ると、もう少しそういう「たまに観たくなるライト層」を意識してもよかったのかな、と思う。
studio waspさんのようにこれだけノワールへの教養を持っている方なら、さりげない演出などでノワールの美味しい部分を抽出できると思うんだよね。そういう作品が少し読みたいなと思った。
M
そうですね。硬派さが特長ではありますが、それがそのまま弱点にもなっていて、やっぱり敷居の高さを感じてしまったのは事実ですね。
この作品、作りが凄く丁寧なんです。ゲームをいきなり閉じても、次開くと閉じた続きから再開できたり、豊富なメニューがあったり、「人物相関図」や「元ネタ辞典」なんかも用意されています。ノベルゲームへの愛、ノワール系への愛を感じる作り込みですね。

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suzuki
特に「元ネタ辞典」は良いですねー! 「特定の分野に造詣が深い人の話」っていうのは鉄板だと思います。良くわからなくてもなんとなく聞いてしまう。だからこそ笠井さんの言う通り、ノワール系の「扉」となるような作品をつい求めてしまいますね。
M
この作品、暴力が多く描かれるんですけど、かなり情熱的な話でもあるんですよね。その辺りも素敵だと思います。
音楽もどれもカッコよくて、私はサウンドトラック欲しさにイベント限定プレミアム版を手に入れちゃいました。
笠井
デザイン全体に統一感があるのも素晴らしいよね。こういうブレない作品にはファンもついてくると思います。期待したいですね。


来る8/30(日)のコミティア113では、「紅蜘蛛/Red Spiderプレミアム版」・「紅蜘蛛2/Red Spider2」に加え、楽曲サントラを同梱したイベント限定プレミアムを頒布予定とのことです。

笑い・泣き・感動を詰め込んだ上質なエンタメ

作品名:
幼女天使とロリコン紳士
PLAY:
http://coterion.tumblr.com/
制作者:
コーテリヲン

笠井
最後になります。Coterionさんの「幼女天使とロリコン紳士」。この作品はsuzukiくんが推しているのが印象的だった。
suzuki
はい。この作品、物語の「起承転結」が本当によく出来ていると思います。ラノベを思わせる分かりやすいフックで導入し、ストーリー中盤は笑いあり泣きありで、クライマックスは理想的な感慨を与えてくれます。

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M
そうですね。フフッと笑えるところもありつつ、ほどよく感動もできる爽やかな読後感で、手堅い印象を受けました。タイトルと雰囲気から期待されるものをちゃんと提供されていて、心地良いですよね。丁寧に作られています。
どちらかというと、こういうライトなものより伝えたいものをドシッと伝えるもののほうが好きなのですが、これは楽しめました。
ただ、Surface pro3で操作していたのですが、システムが少し使いづらいのが気になりました。UIデザインもややそっけない印象でした。
笠井
僕も手堅い作品だと思った。一枚絵の使い方や画面効果に少し気になるところはあったけど、絵もかわいいし、やりたいことがきちっと出来ているなと思った。物語がコンパクトにきっちりまとまっているのは良いね。
suzuki
そうなんですよ。プレイ時間は映画1本見るぐらいですが、そこに笑い・泣き・感動を詰め込んだ上質なエンタメになっています。プレイ時間と提供される感慨のバランスが素晴らしいです。
映画って大体2時間ぐらいじゃないですか。でもこれってよくよく考えると、2時間前後である必要って必ずしもないんですよね。長い映画の歴史の中で、「最良の時間」として最適化された結果だと思うんです。
笠井
ふーむ、なるほど。確かに、特に商業だとノベルゲームは20時間~みたいな風潮になっているけど、物語飽食の時代、本当に適切かという疑問は僕も常に持っている。
suzuki
ライトノベルやハリウッド映画ってストーリー構築術が物凄く発達していると思います。ユーザーが親しみやすい・まとまった作品を作るヒントが詰まっている。この作品はそれらを彷彿とさせるストーリーだったと思います。

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M
このノベル、このサークルの処女作みたいなんですよね。初めての作品でこれだけユーザーが楽しむことを意識して作品を仕上げられるのはすごいと思います。今後の活躍に期待したいですね。
笠井
受賞おめでとうございます!

次回更新は8/14(金)

いかがでしたでしょうか。次回は優秀賞の2作品の座談会をお送りする予定です。

コミケ真っ最中ですが、待ち時間などにぜひお読みください。お楽しみに!